東洋医学が教える「秋と臓腑」の深い関係
猛暑から一転、急に寒くなってきましたね。
私たちの体は急激な環境変化に追いつけず、不調をきたしやすくなります。漢方の考え方では、四季それぞれに影響を受けやすい臓腑(ぞうふ)があり、「秋は肺(はい)の季節」と位置づけられています。
秋は「燥邪(そうじゃ)」の季節
秋の気候の特徴は、なんといっても「乾燥」です。漢方の世界ではこの乾燥した空気(気象条件)を体に悪影響を及ぼす邪気の一つとして「燥邪(そうじゃ)」と呼びます。
この燥邪が真っ先にダメージを与えるのが、体の潤い司る「肺」なのです。
秋の主役「肺」:呼吸器・皮膚・鼻を司る
漢方でいう「肺」は、西洋医学の呼吸器としての機能だけでなく、体全体の「気(き)」と「水(すい:津液)」の巡りをコントロールする重要な役割を持っています。
- 気(バリア)を司る: 免疫力や体温調節などの体のバリア機能(衛気・えき)と深い関わりがあります。
- 潤いを司る: 皮膚や粘膜に潤いを与え、乾燥から守っています。
そのため、肺が燥邪で乾燥すると、皮膚、鼻、喉といった粘膜部分の潤いが失われ、様々な不調となって現れます。
「肺と大腸」は表裏一体の関係
漢方では、内臓同士が連携して働くことを重視しており、特に「肺」と「大腸」は表裏一体(ひょうりいったい)の関係にあるとされています。
- 肺が乾燥すると、その乾燥が経絡(エネルギーライン)を通じて大腸にも影響を与え、腸内の潤い不足を引き起こします。
- 結果、便が硬くなり、水分が少ない「コロコロした便秘(燥結便)」になりやすくなります。
「急に便秘がちになった」「肌が荒れた」という方は、肺と大腸の乾燥が原因かもしれません。
秋に注意したい具体的な不調
乾燥と冷え、そして肺・大腸の不調が原因で、秋には以下のようなトラブルが起こりやすくなります。
| 部位 | 主な不調 | 漢方的な原因 |
|---|---|---|
| 鼻・喉 | 空咳、粘り気のある痰、鼻水・鼻詰まり、アレルギー性鼻炎・喘息の悪化、喉のイガイガ | 肺の乾燥(燥邪)、水の巡りの悪化 |
| 皮膚 | 肌の乾燥(カサカサ)、かゆみ、アトピー性皮膚炎の悪化 | 肺の潤い不足(津液不足) |
| 大腸 | 便秘(コロコロ便)、排便困難、お腹の張り | 大腸の乾燥、冷えによる「気」の停滞 |
【今日からできる】漢方の秋の養生法
乾燥から肺を守り、冷えから体を守る。この二つが秋の養生の鍵です。
対策1:乾燥を潤す「潤肺(じゅんぱい)」の食養生

秋の食養生のキーワードは「潤すこと」。肺を潤す作用(潤肺作用)があり、さらに体のエネルギーを補う食材を積極的に摂りましょう。
| 食材グループ | おすすめ食材 | 養生ポイント |
|---|---|---|
| 白い食材 | 梨、れんこん、白きくらげ、大根、山芋、ゆり根 | 漢方では「白」い食材が肺の働きを助け、潤いを補うと考えられています。特に梨は熱を冷まし、喉を潤す秋の代表的な果物です。 |
| ねばねば | 里芋、長芋(山芋) | 粘り成分(ムチンなど)が粘膜の保護や免疫力アップを助けます。 |
| 潤い・滋養 | はちみつ、松の実、白ごま、豆乳、卵 | はちみつや豆乳は肺や大腸を穏やかに潤し、咳や乾燥による便秘の改善にも役立ちます。 |
| 酸味 | 梅、柑橘類(レモン、みかんなど) | 東洋医学では、秋には適度な酸味でエネルギーの漏れを防ぐと良いとされています。 |
【NGな食習慣】
- 冷たいもの: 胃腸を冷やし、肺につながる大腸の働きを弱めます。温かい食事・飲み物を中心にしましょう。
- 辛すぎるもの(香辛料): 体の「気」を発散させ、潤いを消耗させやすくなるため、摂りすぎに注意です。
対策2:急な冷え込みから身を守る「温度調節」

寒暖差の激しい秋は、体温調節が非常に大切です。
- 首もと、お腹、足首の保温: 漢方でいう「風邪(ふうじゃ)」は首元から入ると考えられます。スカーフや薄手の羽織りものを活用し、冷えやすいこれらの部位を保護しましょう。
- 朝晩の服装調節: 日中の気温が高くても、朝晩の冷え込みに備えて脱ぎ着しやすい服装を心がけましょう。
- 温かい飲み物: 一度に大量に飲むのではなく、少しずつ温かい飲み物(白湯や生姜紅茶など)を摂り、内側から潤いと温もりを与えます。
対策3:早寝早起きの習慣と「ゆっくりとした運動」
秋は夏の疲れを癒し、冬に備えてエネルギーを蓄える時期です。
- 早寝早起き: 陽の光を浴びて体内時計を整え、自律神経のバランスを保ちます。夜更かしはエネルギー(気・津液)を消耗させやすいので控えましょう。
- 深呼吸: 肺の気を活性化させるために、朝の新鮮な空気の中でゆっくりと深い呼吸を意識しましょう。
- 激しい運動は避ける: エネルギーを消耗しすぎる激しい運動は避け、ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、体をゆっくりと動かし、気を巡らせる運動がおすすめです。
不調が続くなら:お気軽にご相談ください。
上記のような養生法を心がけても、咳が止まらない、鼻炎が長引く、便秘が解消しないといった不調が続く場合は、体のバランスが大きく崩れている可能性があります。
どうぞお気軽にご相談ください
まとめ
秋の不調の鍵は「肺と大腸の乾燥」、そして「寒暖差による冷え」です。
- 潤す食材を摂り、肺と大腸をいたわる。
- 温かい服装で体を冷えから守る。
- ゆったりとした生活習慣でエネルギーを蓄える。
このシンプルな漢方の知恵を実践して、今年の秋を健康的に乗り切り、来るべき冬に備えましょう!

