皆さんは「風の電話」をご存知ですか。それは、岩手県大槌町にある白い電話ボックス。
太平洋が見える風景を気に入って移住した庭師の佐々木格(ささき いたる)さんが、自宅の庭に「メモリアルガーデン」を造り、「風の電話ボックス」を置いたのです。東日本大震災の犠牲者や行方不明者の親族らの「心の復興」のきっかけになればとの想いから。
庭は10メートル四方くらい。祈りの像と、海岸に向けて腰掛けられるベンチを設置。敷石の先に白い電話ボックスがあり、中にダイヤル式の黒電話があります。震災前から不要になったものを譲り受け置いていたものだそうです。
一人っきりになって電話かけるように相手に思いを伝える空間で、実際の電話線はつながっていません。
その電話機の横にはこう書いてあります。
「風の電話は心で話します 静かに目を閉じ 耳を澄ましてください 風の音が又(また)は浪(なみ)の音が 或(ある)いは小鳥のさえずりが聞こえたなら あなたの想(おも)いを伝えて下さい」
自宅から見える浪板海岸に津波が襲来し、街が破壊され、多くの人達が命を落とした中で生き残った佐々木さんは、「自分は生かされた」という感覚になり、震災以降は、「この生かされた命を、誰かの役に立つことに使いたい」と考えるようになったそうです。
この“電話線の無い電話ボックス”は、親しい人を亡くした被災者が、空にいるその人と、静かに対話をするための場所。「せめて一言、最後に話をしたかった人は多いはず」。そんな思いが込められました。
しかし今年は3.11の印象が薄らいでしまいそうな新型コロナウィルスの感染拡大。そしてウィルスに劣らぬほどの勢いで拡大する不安感や恐怖感。経済活動の停滞感。
そんな中、とても嬉しい心温まるニュースが届きました。山梨県内の女子中学1年生が、612枚のマスクを自分で手作りし県に寄付したというのです。彼女は、薬局でマスクを購入できなかった高齢者を見かけて製作を思い立ったといいます。ずっと貯めておいたお年玉で材料を購入し、家族の支援を受けながらミシンで布を縫うなどして大人用400枚、子ども用212枚を作りました。「皆様のお役に立ったらうれしいです。手洗い、うがいは念入りに」などとメッセージも添えました。
新型コロナウィルス感染拡大にはどんな意味があるのだろうか。
風の電話と手作りマスク。心を動かされる人は多いはず。
現実を素直に受け入れ、不平不満に負けずに自分のすべきことをする。
そしてその行動には人を思いやる心が満ち溢れています。
日本にはそんな人がたくさんいると信じて止みません。
頑張れ日本!