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命の連鎖と墓参り

今年は、ナカムラ薬局が創業60年となり、これまで当店を支えてくださっている多くのお客様そしてスタッフや取引先様ほかたくさんの業者様方に改めて感謝感謝の年でした。また私生活では結婚25周年、大学生の一人娘が留学のため渡米するなど充実していたと同時にとても慌ただしい時間でもあったように思います。そんな中、今年始めた新しい生活習慣があります。それはお墓参り。金巻家のお墓は埼玉にあり、ここ山梨からだと90分ほどかかります。忙しさを理由についついお墓参りから遠ざかってしまいます。 自分のルーツを考えた時ご先祖様がいなければ自分の存在はないわけです。因みに、私に両親がいて、両親にもその両親がいて・・・・。その系図を十代遡ると、なんとその合計は2の10乗、すなわち1024人になります。そのうちのたった一人が欠けていても今の自分はこの世に存在していないことになります。この数字を知ると自分の存在の大切さや尊さを感じずにはいられません。
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不思議なものでお墓参りに行くと心が落ち着くのです。心の中での波の揺れ幅が小さくなるように思います。墓参りに行く時は決まって早朝5時すぎには出かけます。それくらいの時間だと7時すぎにはお墓に到着。そして早朝は誰もいません。夏の晴れた日などは、空気が澄みわたり静寂の中に鳥がさえずり、とても清々しい気分になります。お墓という場所が自分をそんな風にしてくれているのかも知れませんね。これまでの私ならば、なんとなく墓石に水をかけ、なんとなくお花を手向け、なんとなくお線香をあげていたような気がします。でも今年からは違っています。自分からやろうと決めるとこんなにも違うものかと自分でも不思議です。草をむしり、墓石を洗い、細部はブラシで汚れをとり、きれいに水を拭き取って。前日から用意しておいたお花を供えます。花切りバサミを持参して長さも調節して。そして線香に火をつけて。早朝の空気に線香の香りが漂いなんとも心穏やかになる時間です。そしてしばし合掌。近況報告や悩みごと相談、そして娘の無事をお願いして。ゆっくりと静かに流れるその時間は本当に貴重だと毎回実感しています。
いつも思うことですが、供える花は、手をあわせる私たち側に向いています。ということは、手をあわせる対象である亡くなった父もご先祖様もみな自分の中に存在するということになりますよね。「亡くなっても私たちの心の中で生きている」という言葉を耳にしたことがありますが、まさにその通りだと思います。

先日、放送作家の永六輔さんが亡くなり、お別れの会で、娘で元アナウンサーでもある永麻里さんが素晴らしい挨拶をされていました。
「生前より父は口癖のように申しておりました。そもそも浅草のお寺の息子として生まれ育ったからでしょうか。「いいかみんな、人っていうのは二度死ぬんだよ。一度目は個体死。心臓の停止をもってなのか、脳死をもってなのか議論はいろいろあるけど、個体としての終わりが一度目の死。でもそこから先もまだ生きているんだよ。二度目の死がないとずっと生きているんだよ。死んでも誰かが自分のことを思ってくれている、誰かが自分のことを記憶に残してくれている、時々語ってくれている。こういうことがある限り生きているんだよ。そしてこの世界中で誰一人として自分こと覚えてくれている人がいなくなった時に二度目の死をむかえて人は死ぬんだよ」と父はいつも申しておりました。父はまだ一度目の死をむかえたところです。今後とも父をよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございます。」と。
この挨拶の内容を知って、お墓参りの大切さも改めて教わったような気がしました。大切な人を思い手をあわせることで、父もご先祖様たちも私の心で生き続けることができ私たちもそれを実感できるのです。
楽しいことばかりでなく、つらいこともあるでしょうが、時は止まることはありません。また楽しい時が必ずやってきます。成功もあれば失敗もあります。でも失敗は成功の前のステップと考えれば、成功するまで挑戦し続ければ失敗という出来事は存在しません。
多くの命の連鎖のおかげでせっかく生かされている自分。どうせなら楽しく笑顔で。

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