毎月13日の朝に鳴る花火の音。何の花火かご存知でしょうか?
これは当店が加盟する三町商店街の「十三(とみ)の市(いち)」という売出しの合図。今月で670回目を数える歴史ある売り出しです。
三町商店街は都留市駅と国道139 号線の交差点を中心に横町、田町、栄町の三つの街から構成され、谷村の大火をきっかけに力強く復興してきた商店街。
ここで谷村の大火について少し触れてみます。昭和24年5月13日午前2時30分、下谷下町の撚糸工場のモーターの過熱から出火。乾燥つづきの天候と折からの風速15メートルの烈風にあおられ、火は瞬く間に下町の一部、横町の全域、栄町、田町の一部を焼失する大火災となりました。午前6時50分ごろようやく鎮火したそうです。羅災地は谷村町の繁華街の中心地であり旧家も多く、また東漸寺、専念寺、西凉寺の寺院や多くの文化財を焼失しました。そんな中、西凉寺の儀秀稲荷社だけが焼損もなく焼け残ったのでした。
それ以来ここを防災の神様とあがめるようなり毎年5月13日は祭典の日となりました。13日の「十三」を“とみ”と呼び「十三の市」として毎月13 日に共同売り出しを行うようになり現在に至っているのです。昭和30~40年代は商店街として地域の顔として繁栄しましたが、時代の変化とともに来街者が減少。同じように加盟店も年々減少しており厳しい商店街運営が迫られているのが現状です。
そんな厳しい現実の中、私たち商店街の運営を応援してくれている頼もしい仲間を紹介したいと思います。彼らは都留文科大学社会学科の環境コミュ二ティ創造を専攻する3年生5人。今年度からは2年生も時々参加してくれています。自らが研究テーマを設定し自主的な研究を進める勉強熱心な学生さん達。
そのグループ名は「プロジェクト研究」彼らは“地域やそこに暮らす人々と積極的に関わることから学ぶ”という活動方針を掲げているのです。私は三町商店街で事務局長をしているので彼らと関わることがとても多いのです。毎月1回行われる夜8:30からの役員会にも彼らは欠かさず出席してくれます。会議が行われる三町亭まで、文大方面から自転車で、時には歩いてまで来てくれるのです。
イベントの企画内容を立案してくれたり、イベントの手伝いをしてくれたりととても頼もしい仲間です。今月13日の儀秀稲荷例大祭における三町商店街の抽選会を手伝ってくれたり、早朝より豚汁200人分を作ってお祭り会場で市民に無料配布してくれました。他にも農業系サークルのメンバーも加わって、自ら育てたもち米から作ったおもちをふるまってくれたのです。彼らのその素直な人柄に心打たれずにはいられません。
学ぶということは、素直であることがとても重要に感じます。批判が先にあれば学びは浅いものになってしまうからです。因みに、学生さんと文大生との関わりは平成10年度から3年間かけて行った商業活性化事業の時から。ある日一人の2年生の女子学生Tさんが店に私を訪ねてきました。Tさん「はじめまして。私は都留文科大学社会学科のTです。商店街活動を手伝わせていただきたいのですが。」 私「・・・・・」ただただ驚いたことを覚えています。商業活性化事業の事を知って訪ねてきたのです。
Tさんは約2年半私たちの活性化事業に携わり、その間他にも同様に地域に興味ある学生を連れて来てくれました。彼女の卒業論文のテーマは「三町商店街物語」。毎月13日のチラシをぜひご覧になってみてください。チラシの上部に「人に自然にあったか三町」というキャッチフレーズが筆字で書かれていますが、これはその女子学生が考え自ら筆で書いたものをそのまま使用しているのです。
その頃から現在までその時々で人数こそ様々ですが文大生とのつながりが続いており本当にありがたいことです。しかしながら、彼らに私たち地元商店街は何を教えてあげられているのだろうか。学生時代という貴重な彼らの時間を果たして有意義なものにしてあげられているのか。そんなことを自問自答しています。
商店個々がもっともっと努力するしか方法はありません。そんな姿を学生さんたちにそして次の世代へと見せていくことが私たち現役世代の重要な責任なのかもしれません。
来月は671回目の十三の市。当初から売り出しスタートの合図として親しまれてきた花火の音が消える。
ここからが更なる踏ん張りどころ。
負けるわけにはいかない。
■こころ通信 2013年6月号